子宮頚がんの原因は、性交渉で感染する発がん性ヒトパピローマウイルス(HPV)が大きな要因であると医学的に判明しています。
HPVは多くの女性が一生のうちに一度は感染するごくありふれたウイルスですが、感染した人すべてが子宮頸がんを発症しやすいというわけではありません。HPVは感染しても多くの場合、感染は一時的で、ウイルスは自然に排出されます。しかし、中にはウイルスが自然排出されず、感染が持続する場合があり、その状態が長く続くと、数年から十数年かけてがんになっていく可能性が高くなります。HPVは一度感染して自然排出されても免疫は獲得されません。つまり、何歳の女性でも性行為のたびに繰り返し感染する可能性があります。
当然、感染の回数が増えれば、それだけ持続感染へと移行してしまう確率も高くなります。
では、子宮頸がんワクチンを接種すれば、子宮頸がんにならない?性交渉経験があるのでワクチンは意味がない?いずれも答えはNOです。
誤解のないようにお話しますと、子宮頸癌ワクチンを打ったからといって100%防げるものではありません。現在、子宮頸癌と関連のあるヒトパピローマウイルスは数十種類あることがわかっています。その中でも特にリスクが高いとされるタイプはHPV16型をはじめ約15種類程度知られています。
現在使用されているワクチンは、子宮頸がんと因果関係の強い2種類(HPV16型、18型)に対してのみ有効であってそれ以外の種類ものにはほぼ無効であると考えられています。
ではなぜこの2種類しかターゲットにされてないか簡単に申しますと、16型、18型の感染は他のタイプと比べウイルスが除去されにくく悪化も早い点にあります。
「子宮頸癌ワクチン」とあたかも子宮頸癌全体に対して有効であるように誇張された宣伝ではありますが、おそらく日本人に対しては70%程度の有効性しか期待できません。(海外に比べ、日本人にHPV16型、18型感染率は若干低い。アジア人は52型、58型が多いといったタイプが多いためと考えられています。)
HPVは、たった1回の性行為でも感染し、それが持続感染となってしまう可能性があります。そうなってしまえばもうワクチンの効果はありませんので、子宮頸がんワクチンの最適な接種時期は、初めて性行為をする以前です。日本では10歳以上の女性から接種することが可能です。もちろん、性行為の経験のある女性でも、幸いHPVの持続感染状態になければ、このワクチンの効果は充分にありますので、年齢の上限はありません。
以上をふまえたうえで接種されることが必要です。公的助成が得られない年齢ですと、3回接種で5万円前後という医療機関が多いようです。やはり高い!!(ワクチン自体が高額)一方、ワクチンの原則として、「防げるものは防ごう」という考えがあります。70-80%で“癌を予防”できる。この事実と費用との関係をどう考えるかは、かなり個人差が出るトコロ。これが事実でしょう。
じゃ、どーすんのよ!?選択は目の前にあるじゃない、ということになります。接種するの?しないの?
問題の一つの解決策として、助成金の年齢枠をさらに広げる。しかし、当然税金を投入することになります。国も国民もなにを大事にするのかを考えなくてはいかんわけです。政治家も国民も腹をくくる必要がある(大げさか)。現段階では、年齢制限なく、ワクチンをすすめるのがベターと考えています。
私が日々の診療で大事にしたいところが、“教育”です。コンドームの使用で、HIVが減少するのと同様。ほんのちょっとの時間と気持ちがあればできる。中学生に真顔で、「100人とセックスするのと1人とどっちが病気にかかりやすい?ワクチンは100%じゃない。自分の体を守れるのは自分だけやで」と一言。どれほど効果があるかは不明。しかし町医者としてできることは、ちょっとでも努めていきたいです。
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