便秘治療薬としては、“実に32年ぶりの新薬”として、ルビプロストン(商品名アミティーザ)が、先月発売されました。確かに私が医師になって約15年、便秘薬の新薬はなかった・・。自分なりに漢方を勉強したり、“武器”を増やす努力はしておりましたが。
この薬は、これまでにないメカニズムを持つ、便秘症の治療薬です。
ルビプロストンは、プロスタグランジンという生体内にある生理活性物質の分解産物である、プロストンの化合物で、小腸の粘膜上皮にあるクロールイオンの出入りを調節する、クロライドチャネルを活性化させる作用があります。
クロライドチャネルが開くと、それにより生じた浸透圧差により、水が腸管の中へと移動します。これにより結果として大腸に流れる水分量が増え、便がより多く水分を含むことにより、便秘を改善する効果があると考えられます。
薬屋さんから説明を聞いたとき、ルビプロストンの効果は、酸化マグネシウムに似ているではないか!?と思ったドクターは多い筈。浸透圧差によって、水分を腸管内に引き出す点では同じ。
ただ、酸化マグネシウムはそれに伴い、マグネシウムが身体に吸収されるので、腎機能の低下した方や高齢者では、高マグネシウム血症の副作用が問題となり、実際に死亡事例も報告されています。その点ルビプロストンは、高マグネシウム血症は生じない、という利点があります。
臨床試験の結果からは、週3回未満の排便回数が、平均で5回以上に改善しており、比較的安定した効果が期待出来そうですが、患者さんの45%が吐き気などの副作用のために減量している点から、慎重な姿勢が望まれるように思います。
また、仮に酸化マグネシウムと同等の効果であるとしても、薬の値段は物凄く違います。勿論、新薬が格段に高価です。薬屋さんがわざわざ説明に来て下さる薬は、大体において高い!!カゼ薬なんてだーれも売り込みには来ません。これが現実というモノ。ですから費用対効果をよくよく考えないといけないわけです。禁忌でなければ、酸化マグネシウムを優先するのが妥当のように、現時点では思います。酸化マグネシウム使用で効果がよくない場合には、変更も考えるというところでしょうか。