みんな考えることは同じやなぁ。自分の脳みそも捨てたものではないなと思う反面、所詮自分も含め大多数の凡人の考えることに変わりはないな、などと一人で納得しています。
何のことか?「子宮頸がんワクチン」のことです。それもfor boys!!製薬会社の人に質問をぶつけても、なんとなくはぐらかされた感じでした、先日。
開業してつらいこと?いろいろあるのですが、その一つに医療の進歩に取り残されるのではないかという懸念です。常にブラッシュアップしていく能力が求められます。自分の興味のある分野はそれなりについていけますが、そうでないとだんだんと浦島太郎に。怖いです。
母校の医学部の教育にはなかったけれど、卒後の長い医者人生を考えれば、
そのためのhow to学みたいなものがあってもいいのかもしれません。以外とそれこそが大事だったりして。
アホで素朴な疑問も、ぶつける相手がいないとつらいものです。前任の市立柏原病院では、医局でI津先生やY川先生といろいろ議論したものです。
本題に戻ります。当然のことながら、当院ではfor girlsに子宮頸がんワクチンを接種しています。常識ですよね。私も奈良市医師会の一員、地域医療を守る身。しかし、今日の常識は明日の非常識。よくあることです。
私は彼女たち(中学1年生~高校1年生)に、せっかくの機会と思い、HPV(子宮頸がんの原因となるウイルス)以外にも性交渉でもらってしまう病気についても説明しています。梅毒からHIVに至るまで。子宮頸がんワクチンだけで安心してしまい、彼女たちの健康が損なわれることを恐れるからです。最後に「1人とsexするのと100人とsexするのとどっちが危ない?」と大真面目に質問して終了しています。ときに中学生にはちょっとどぎつい内容かなと思ったりもしますが。彼女たちには、HPVはsexで男性からもらってしまうと説明しているのです。論理的に考えれば、では移す側の男性には免疫しなくて良いのかという疑問が出てきます。
やはり同じことをみなさん考えるものなのですね。
①まず米国。CDC could soon recommend boys receive HPV vaccine
米国では4価ガーダシルが2006年に、2価のサーバリックスが2009年に認可され、主流はガーダシルとなっています。
ガーダシルは9-26歳の“男女に接種が認められています”が、現在、国のワクチンプログラムとして推奨されているのは「11-12歳の女子」です。
しかし、2011年のはじめに、米国小児科学会American Academy of Pediatricsが男子にも接種を推奨するワクチンと位置付けました。
日本では子宮頸がんの円錐切除術は半日の日帰りが可能だそうで、負担する費用も6万円(ワクチンの値段と同じくらい)。しかし、米国では手術と病院滞在で150万円前後だそうです。
医療保険会社も公的な医療保険も、ワクチン代を負担するほうがうんと安上がりです。
医療のグラウンドデザインが異なるのでなんともいえませんが、ずっと男性への公費接種拡大を検討しているオーストラリアでは、1回あたりが30ドルにならないと費用対効果としてみあわないと男性への拡大はきまりません。
②英国。Assessing the case for male HPV vaccination will require careful consideration and further data to see if the potential benefits would justify the costs.
「追加データの検討と費用対効果を考えないと・・・」というところで止まっています。
さて、日本はどう対応するのでしょうか。医療と国家財政とは切っても切り離せません。いままでのワクチン行政の迷走ぶりからして、決定は相当先でしょう。
10年前から肺炎球菌ワクチンをすすめてきたのに、だれも見向きもしてくれなかった・・・。だけど中尾彬と加賀まりこの力で、地域のみなさんから問い合わせが増えてとてもうれしく思っている、ちょっと複雑な気持ちの音川でした。みなさんよい週末を。