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インスリン外来導入できた!

インスリン外来導入できた! (2011年11月20日 日 23:51)|病気|

BOTから強化インスリン療法へ (日経メディカルより)

1.BOT(Basal supported Oral Therapy)からの発展
 外来でのインスリン導入は、1日1回の持効型インスリン製剤と経口薬の併用療法、いわゆるBOT(Basal supported Oral Therapy)から始めると、インスリンに抵抗感が強い患者や高齢者でも受け入れが容易である。 持効型インスリンの投与は、就寝前(または朝食前でも可)に0.1~0.2単位/kg(または6単位程度)から開始する。早朝空腹時血糖(FBG)130mg/dL以下を目標に、血糖自己測定(SMBG)の値 and/or 受診時の空腹時血糖値を見ながら、受診ごとに2~4単位ずつ増量していく。受診の間隔は、最初は1週間後、その後は1~2週間とする。
 経口薬のメトホルミンやピオグリタゾンはそのままの用量で継続。SU薬については、低血糖の危険があるため、最少量まで減量する。

 食後高血糖となる食事の前に超速効型を追加
 BOTによってFBGが130mg/dL以下になっても、HbA1cが7%(JDS値)以下まで改善してこない場合、各食事の2時間後、患者にSMBGを行ってもらい、どの食事の後に血糖値が高くなっているのかを確認する。
 食後血糖が高くなる食事が分かれば、その食事の直前に超速効型インスリンを2~4単位追加する。例えば、朝食後2時間値が高ければ(200mg/dL以上)、朝食前に超速効型インスリンを2~4単位、また昼食後2時間値が高ければ、昼食直前に速効型インスリンを2~4単位追加する。
 このようにして、徐々に頻回注射法へと近づけていけば、患者さんの受け入れも
良好である。
 どうしても1日1回注射しかできない患者さんの場合には、血糖値が高くなる食事の前にグリニド系薬かαグルコシダーゼ阻害薬(αGI)を併用してみるのも一法である。
 本年(2011年)9月から、DPP-4阻害薬の中でシタグリプチン(商品名グラクティブ、ジャヌビア)は、インスリンとの併用が効能に追加されて保険適用となった。BOTにシタグリプチンを追加してみる方法も考えられる。ただし、低血糖には十分な注意を要する。

2.インスリン頻回注射法(強化インスリン療法:Basal Bolus Therapy;BBT)
 健常人の1日インスリン分泌量は体重1kg当たり0.3~0.6単位であり、体重60kgの人ならば1日の分泌量は約20~30単位となる。ほぼ半分は24時間分泌されている基礎分泌であり、残り半分が追加分泌として、各食事のときに分泌される。
 この分泌パターンを考慮して、健常人のインスリン分泌パターンにできるだけ近づける頻回注射法(強化インスリン療法:Basal Bolus Therapy;BBT)が、1型糖尿病では当然であるが、2型糖尿病においてももっとも優れたインスリン療法である。
 外来でのインスリン導入時の必要量の決め方について、2型糖尿病においては、体重当たり0.3単位としてインスリン量を計算し、その値を4等分して基礎分泌分および各3食直前の追加分泌分とする。
 インスリン分泌能がほぼ完全に枯渇している1型糖尿病では、基礎分泌分のインスリン補充の割合を、健常人における分泌の割合と同様に1日量の約半分とカウントする必要がある。これに対し、2型糖尿病では基礎分泌能はまだ残存している場合が多い。そのため、2型糖尿病におけるインスリン導入では、基礎分泌分のインスリン補充を1日量の約4分の1と設定して始めると、経験的にうまくいく場合が多い。
 例えば体重60kgの患者の場合、60kg×0.3単位/kg=18単位。これを4等分し、
各4単位ずつとして、各食直前に超速効型インスリンを4-4-4とし、就寝前に持効型インスリン4単位から開始する。 同時に、各食前および就寝前の1日4回、SMBGを行うよう指導し、各血糖値を記録してもらう。
 導入後はSMBGの結果を参照し、各食前が100~130mg/dL、就寝前が120~150mg/dLくらいになるまで、3日~1週間ごとに責任インスリンの量を1~2単位ずつ増減する。
 

責任インスリンとは、その血糖値にもっとも影響を及ぼすインスリンのことである。具体的には各測定の一つ前に打つインスリンで、昼食前の血糖値については朝食前の超速効型インスリン、夕食前の血糖値については昼食前の超速効型インスリン、就寝前の血糖値については夕食前の超速効型インスリンが、それぞれ責任インスリンとなる。そして、早朝空腹時血糖値(FBG)に関しては、就寝前の持効型インスリンが責任インスリンである。
 例えば、夕食前の血糖値が高い場合、責任インスリンである昼食前の超速効型インスリンを増量する。逆に、ある食前の血糖値が80mg/dL未満の場合、責任インスリンとして、その前の食事のときに打った超速効型インスリンを1~2単位減らす。また、就寝前の持効型インスリンは、FBG100~130mg/dLを目標に1~2単位ずつ増減していく。

3.混合型インスリン2回注射法
 BBTは2型糖尿病においても理想的なインスリン療法ではあるが、どうしても昼食時
にはインスリン注射ができないなど、様々な理由により実施が難しい患者がいる。
そのような場合には、混合型インスリン製剤(超速効型と中間型を50対50に混合した
ノボラピッド50ミックス、ヒューマログミックス50)の1日2回注射法を試みる。
 開始時のインスリン総量は、前述のBBTと同様に計算する。60~70%を朝食直前に、
30~40%を夕食直前に注射する。
 体重60kgの人では、60kg×0.3単位/kg=18単位、このうち10単位を朝食直前に、
8単位を夕食直前に注射する。混合型製剤では、インスリンを十分に転倒させて混和
することが重要で、患者への指導は入念に行う必要がある。
 BOTやBBTと同様、SMBGに基づいてインスリン量を調整していくが、超速効型と
中間型が混在するインスリンの量を調整するのは容易ではない。
 2回注射法では、特に昼食後と夕食前に高血糖となりやすい。そういった場合、
昼食後の高血糖を避けるため、昼食の炭水化物を減らすか、昼食前にαGIか
グリニド系薬剤を服用してもらうなど、インスリン注射以外の調整が必要となることも
ある。逆に、食間の低血糖を補食で予防することが必要となる場合もある。
 2回注射法で血糖コントロールが難しい場合には、糖尿病専門医への紹介、
あるいはコンサルトをしていただきたい。
 

以上、BOT、BBT、2回注射法について解説したが、年齢、理解力、合併疾患の有無、生活様式などに応じ、個々の患者さんに最も適した治療法を適宜選択していくことが重要である。そのため、一つの治療法に固執することなく、柔軟な変更・選択を常に念頭に置く必要がある。
 糖尿病専門医でなくても、十分な患者指導ができる看護スタッフとともに診療できる体制であれば、外来でのインスリン導入は可能である。SMBGに基づいたインスリン量の調整も、ぜひ行ってほしい。
 なお、低血糖症状とその対処法についての十分な説明と指導は、インスリン療法に
必須である。どのインスリン療法を導入する場合でも、忘れずに行わなければならない。

先日、当院でも初めて外来インスリン導入をされた患者さんがいました。上記の太文字部分しかできていませんが、これなくしてインスリン外来導入はあり得ません。まだまだ始まったばかりですが、針がとても細くて痛くもなく、そんなに難しいものではないと仰っていました。まんざらでもない様子。なにをインスリン導入程度で、と思われるかもしれませんが、市民病院時代にはボタンポン!あとは看護婦さんお願いねっ!で済んだことが、すべて何から何まで自分でやらなくてはならないのですから、達成感が全く違います。

「ためしてガッテン」で糖尿病治療の放送がありました。帰宅途中の車のなかで、チラリと見ました(聞きました)。なんでも膵臓が復活する!と。

よくよく聞けば、インスリンを導入することで、糖毒性から膵臓を守ってあげる、という内容ではないですか。我々内科医には、至極当然のことなのですが、テレビ番組になると演出がすごい。とはいえ、これを契機に、当院でも糖尿病治療の重要性に関心をもってくださる患者さんが増えるとありがたいです。



 
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