こんな質問をときどき受けます。
私はちょっとした緊張でよくお腹が鳴り、お腹の中でガスがポコポコというような音がします。検査でもこれといって異常はありませんでした。人前で鳴ると恥ずかしいので、治す方法はあるでしょうか?
ちなみに私も胃腸症状には悩まされてきました。高校受験ではあまりの緊張で、試験中に下痢をしてしまいました。このことが原因かどうかはわかりませんが、受験には失敗しました(単なる実力不足!?)。高校に入ると、試験日の前にはうどん、試験当日はおにぎりかクロワッサンのみという食事法で、なんとか乗り切ってきました。不思議と経験上得られたものです。年齢を経ると神経がずぶとくなるのか、あるいは人生を左右するような試験を受けることがなくなったせいか、いまは全くなくなってしまいました。
みなさんは、お腹がすいたとき「グウ〜」と鳴って恥ずかしい思いをしたことはありませんか。医学的には「腹鳴(ふくめい)」といいますが、若い女性で悩んでいる方は意外に多いようです。まず、食事と消化管運動の関係を考えてみましょう。食事をすると消化管は規則的な収縮運動をはじめます(蠕動といいます)。食べ物が入ってくるとまず胃の上半分が広がって、食べものを貯える働きをします。それに続き、胃の下半分は胃の出口に向かって収縮運動が起こります。この収縮により、食べ物は撹拌され胃液と混ぜ合わされ十二指腸に送り出されます。この収縮は胃の中がからっぽになるまで続きます。では、お腹がすいたときにはどのような運動をしているのでしょう。胃、十二指腸、小腸は強い収縮期と休止期とを繰り返しています。強い収縮は胃からはじまり、十二指腸、小腸へと伝わります。この収縮期が10〜30分続いたあとに、収縮をしない休止期に入ります。この繰り返しが90〜120分間隔で、次の食事がくるまで続きます。この運動は消化管の清掃とも考えられています。腹鳴はこうした空腹時収縮の時に、お腹にたまっていた空気と腸の内容物により起こります。
腹鳴の予防法としては、まず朝食はしっかり摂りましょう。また食事をするときに空気をいっしょに呑み込んでしまう呑気症(どんきしょう)の方に腹鳴を訴える方が多いので、早食いは避けてゆっくりよく噛んで食べましょう。また、炭酸飲料やガムは予想以上に空気を呑み込みますので避けたほうがよいでしょう。では、今まさにお腹が鳴りそうになったら・・。腹式呼吸とか、息を吸ってお腹に力を入れるという方法もありますが、医学的なデータはありませんし、その効果にも個人差があります。一番はお腹が鳴ったらみんなで笑い飛ばすような環境作りが理想的です。緊張すると余計に悪循環に入ってしまいます。
空腹時の腹鳴のほとんどは心配するものではありませんが、空腹時以外にみられる腹鳴や腹痛を伴う場合は他の消化管疾患が原因のこともありますのでご相談下さい。