今日は日本消化器病学会近畿支部の教育講演会に参加してきました。開業してからなかなか時間を作ることができず、ほぼ1年ぶりの勉強会です。大学時代の先輩や後輩に会うことができ、近況報告などすることができました。私は1年前より太ったようです、みなさんから言われました。
写真は大学時代にお世話になった、大阪市立大学医学部付属病院 病院講師の藤井先生です。4人目のお子さんも生まれたそうで、仕事に家事に忙しそうです。藤井先生は、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)の第一線の研究者です。私が大学院時代にNASHの研究で、大変お世話になりました。
胃、肝臓、膵臓など消化器疾患全般について講演を聞くことができました。自分の専門領域外の講演は、あらためて最近の知見に触れることができ、少しインスパイアされました。「もっと勉強せないかんな・・・しかしうちのクリニックには消化器の患者さんは少ない。地域の皆様にさらに啓蒙せねば!」と思った次第です。
ピロリ菌除菌治療については、自分の診療とも関係が深いため、今日の講演は有意義でした。ピロリ菌感染は、萎縮性胃炎、胃潰瘍や十二指腸潰瘍、胃がん、胃MALTリンパ腫など胃を中心としたいろいろな病気の発生や進行に関係しています。日本ヘリコバクター学会が作成した”H.pylori感染の診断と治療のガイドライン”2009改訂版では、病気の有無に関係なくピロリ菌感染症全体に除菌治療を推奨しています
日本では胃がんが多く、世界的にみても日本でのピロリ菌感染率は高いです。1994年世界保健機構(WHO)はピロリ菌を疫学的調査から確実な発がん物質と認定しました。1群(ヒトに対して発ガン性がある)の発がん因子に認定されているのです。早期胃がんに対する内視鏡的治療後胃でがん発生が除菌により1/3に抑制され、胃がん発生の予防効果があることが証明されています。
本日の講演の1枚目のスライドも、「胃がんの原因は、ピロリ菌感染症である」という内容だったと思います。感染症と言い切れるほどのデータが集まっているのだなと、少し驚かされました。子宮頸がんの原因が、ヒトパピローマウイルスであることと同様に、“がんと感染症”という一見無関係な疾患が、実はつながっているという興味深い事実です。
萎縮性胃炎、胃過形成ポリープ、機能性ディスペプシア、逆流性食道炎などもピロリ菌感染との関連が指摘されています。また、除菌治療が“推奨”されています。残念ながら現在のところ、これらに対する除菌治療は保険未収載なのです。しかし、このうちどれかはわかりませんが、今後もう少し除菌治療の適応が拡大するとのこと。ワクチン接種・予防医学に積極的な立場をとっている私としては、除菌療法もいわばワクチンと同じ位置づけ。「予防できる治療は予防しよう」というワクチンの原点・原則と一致します。
まさに胃がんは、VPD(Vaccine Preventable Diseases、ワクチンで防げる病気)と同じと言える時代に入ったのです。