糖尿病の治療の目的は、血糖値を十分に下げて合併症を防ぐことです。具体的には、まずは「HbA1c(ヘモグロビンエーワンシー)」を6.5%未満にすることを目指します。
患者さんの気持ちはよく理解できるのですが、あくまで“合併症を予防する”ことが目的です。検査値をよくすることではありません。
「よく分かっている!」と言われそうなのですが、だんだんと検査結果の虜になっている方も多いのです。
さて、糖尿病の治療法には「食事療法」「運動療法」「薬物療法」の3つがあります。基本は、栄養バランスの良い適正なエネルギー量の食事をとり、日常的によく体を動かすことです。生活習慣の改善を行っても血糖値が下がらない場合には薬を用います。
自分の経験からですが、「食事療法」「運動療法」が薬物療法に勝ることはありません。糖尿病の治療を開始し、いやいやながらも薬物治療をし、最終的に薬物を中止できた患者さんは、すべからく食事療法と運動療法を頑張っておられます。しかしながら、その逆は真とは言い難いのです。
薬物療法では、従来からあるのみ薬や「インスリン注射」のほか、数年前から「インクレチン関連薬」が登場しました。
「インクレチン」は、食事をして糖などが小腸で吸収されたときに、小腸から分泌されるホルモンの一種です。膵臓に働きかけて、インスリン分泌を促す働きをしています。糖尿病がある場合、このインクレチンの作用が不足しています。インクレチン関連薬は、インクレチンの作用不足を改善する薬で、「DPP-4阻害薬」と「GLP-1受容体作動薬」の2種類があります。特徴としては、「食後高血糖にも効果がある」「低血糖を起こしにくい」「体重が増加しにくい」などがあります。
インクレチン関連薬は、血糖の状況によって使い分けられます。1日1~2回内服するDPP-4阻害薬は、HbA1cが7.5~8.0未満の場合に使用します。1日1回自己注射するGLP-1受容体作動薬は、HbA1cが7.5~8.0以上の場合に使用されます。
ここまでは教科書的な記載ですが、実際には高齢者の方など、GLP-1が使えない場合は多々あります。インスリンも同様です。テキストと現場は違うのです。
どちらの薬も、単独で血糖値を下げる効果があります。また、ほかの薬で効果がなかった場合に、インクレチン関連薬に変更したり、従来の薬と併用したりすることによって効果が現われる場合もあります。
当院でもそこそこ処方している薬の話でした。
みなさん、よい週末を。わたしは、土曜・日曜と仕事です・・。