医療現場でNSAIDs(Non-Steroidal Anti-Inflammatory Drugs)と呼んでいるお薬は、その名の通りでステロイドではない抗炎症薬「非ステロイド性抗炎症薬」で、疼痛、発熱、炎症の治療に用いられています。非常に高頻度で使用されている割には、その危険については患者さんの間ではあまり認識されていない印象を持ちます。カゼ引きの際の熱さまし、頭痛の際の痛み止めなど、処方しない日はないと思います。当院は内科ですので、高齢の患者さんが多いのは当然のこと。やはり注意すべき点があります。
さまざまな副反応を起こす可能性があるわけですが、その中で一つご紹介。慢性腎臓病(医療従事者の間ではCKDと呼んでいます)の患者さんへの「痛み止め」の常用は、腎機能障害増悪に拍車をかけます。慢性腎臓病CKD患者さんに望ましい消炎鎮痛薬はあるのでしょうか。解熱鎮痛作用はあるが消炎作用はない厳密に言うとNSAIDsでない「アセトアミノフェン」 (カロナール等)が望ましいとされています。
疼痛ナビにて「CKD患者への消炎鎮痛薬適正使用についてのポイント」を示しています。整形外科では、必要不可欠なお薬NSAIDsですが、アセトアミノフェンには、NSAIDsにはない利点も指摘しています。
変形性関節症や腰痛症は、高齢者に多くみられる疾患であり、NSAIDs投与が行なわれますが、加齢に伴って腎機能は低下していくため、急性腎障害を起こしやすい状態となります。
高齢の患者さんで特に慢性腎臓病CKDを指摘されている方は、消炎鎮痛剤(痛み止め)の服用については、可能な限り頓服での内服をお勧めしています。また、症状の程度によっては、可能な限りアセトアミノフェンを使用しています。 困ったことがあります。一般的に、NSAIDsの方がアセトアミノフェンよりも症状を軽減する効果が高いのです。これは日本でのアセトアミノフェン使用量の問題もありますが、お上の決めた添付文書というものもあるため、なかなかその使用量を超えて使用するにはハードルが高いのです。
NSAIDsの内服経験があり、しっかりと痛みを抑えてくれたとしましょう。患者さんの頭のなかでは、これはある種の成功体験として頭にインプットされます。この成功体験を医師の説明で覆すのはなかなか至難の業です。しかし、薬剤の適正使用に向けて、微力ながら頑張っていきます。